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特養での看取りと家族の覚悟

特別養護老人ホームで施設長をしているゆみこさんがインタビューに答えてくれました。


(職場のことを教えてください)


 私は、特別養護老人ホームの施設長をしています。要介護3以上の方が入所できる施設と、デイサービスと居宅介護支援事業所と包括支援センター併設しています。

 利用者さんは、要介護3以上の方、1番高齢の方が105歳です。多くは高齢者で認知症になっている方です。経済的には生活保護を受けている方が1割ぐらいいらっしゃいます。

介護保険は、収入により自己負担額が何割か決まるのですが、3割負担するという所得の高い方々もいます。多くは1割負担の方です。女性が7割位です。最近は、男性の入所申し込みが非常に増えています。


 認知症になっている方には、ご本人が安心して過せるように気を付けています。何を不安に思っている聞き、傾聴し、座って落ち着いて話をすることで不安が和らぎ、また笑顔が出てくるのを目指しています。


 施設では、看取りをしています。去年は13人の方を看取りました。看取りは、ご家族の覚悟が必要です。徐々に入退院が増え、結局最期病院で亡くなる方もいます。施設で看取ろうとご家族職員で決めていても、末期の呼吸が苦しそうに見え、病院に行くとご家族が判断し、看取りが中止になることがあります。


 入所時に皆さんの希望をお聞きします。延命処置を9割以上の方は希望されません。


 でも、土壇場になると、やっぱり医療が必要と考えることもあるのです。他に、痛みとか出たときに、看取りだからとその痛みを放っておくわけにいきません。肺炎になり熱が40度あるのに、看取りだからこのままにしようというわけではないのです。入院すると、点滴、痰吸引が始まり、施設に戻れなくなる可能性があります。


 看取りで大切にしているのは、ご家族にどういう風に過ごしたいかを聞き、実現することです。


 例えば三波春夫が好きといったら、曲をかけてお部屋で過ごしてもらいます。日本酒をちょっと飲んでもらったり、ビールを飲んでもらったり、お饅頭を食べもらったりします。ご本人が家に帰りたいと言った場合、日中に職員がご自宅まで付き添い、2、3時間たったらまた迎えに行くこともあります。


 やっぱり帰りたいって言うものは帰らせてあげたいのです。


 看取りで多いのは、実は家族関係の修復です。


 喧嘩していて、入所後ほとんど来なかったご家族も、自分の親が死ぬとなると、来てくれます。ご家族みんなで集まってするうちに悪いことだけじゃなくて楽しかったこともあったと気づくようです。だから最期、みんなで良い時間をもち、何とか関係が修復できて、水入らずの家族の時間を過ごせることがあります。


 自宅での介護を終え、入所してきたら、必要なときにいつでも来てくださいとご家族に伝えます。行事、家族懇談会、サービス者会議のときに来てくださいと伝えます。ご家族は、24時間自宅で見たのよりは楽になり、必要な時に関われる。入所したらご家族の縁が全く切れるわけでもないのです。


 看取り時には、ご家族泊まり込んでいくこともあります。兄弟交代で1週間ぐらい泊まった方もいました。



 看取りを始めるにあたり職員研修をしました。やっぱり最初は職員が不安がりました。これでいいのだろうか、死んじゃったけど大丈夫なのか、とみんな不安に思っていました。今は、あなたの勤務中に亡くなったのは選ばれたって言うことだよ、最期あなたに看取って欲しいって選ばれたって言う事なんじゃないってとみんなで言いだしたのです。すると、じゃあ僕は最期でよかったのかなって、私が最期でよかったのかなって、何人も看取りましたと自負が生まれたりしました。


 10年間で69人の方が亡くなりました。職員は慣れて、あと2日位じゃないか、おしっこ出なくなってきた、チアノーゼ出てきた、と状況がわかるようになりました。


 それがご家族の安心につながります。苦しそうな様子をみるのもあとどのくらいですよとか、最期に頑張っていますね、というふうに伝えると、ご家族も安心な様子です。


 病院に入院すると、認知症ゆえに身体拘束を受けたり、点滴を嫌がったりする方もいます。それを見てご家族は園に戻したいとおっしゃることがあり、相談を受けます。医療と園でのケアは異なります。理解しきれないご家族もいます。


 医療を終えることに、ご家族が責任を感じてしまうこともあります。


 100歳を超えたおばあちゃんの状況を、ご家族は老衰とは思えず、長生きしてもらいたいとおっしゃるご家族もいます。



(現状よりもよくするには何が必要ですか)


 職場で一番困っているのは、介護職の人数です。


 他には、喜ばれるので、外出にお連れしたいです。外出加算みたいなのがあったら、そうしたらそれで職員ひとり雇えますね。


(高齢者のシェアハウスを計画しています。どう思いますか)


 ぜひあったらと思います。1人で暮らしているよりも大勢で暮らしたほうが楽しいし、シェアハウスならプライベート空間も守られているでしょうから、問題は無いかなと思います。


 ただ家の中の段差がね。施設に入ってくるのは、日本家屋ゆえに車椅子で生活できないのです。ある程度車椅子でも動けるような生活できるような住環境があれば、施設に入らなくても済むのではないかと私は思っています。車椅子でもちゃんと調理が出来るような、高さの調理台があったりとか、トイレがあったりとか玄関にも段差がなかったりとか、そうすれば特に問題なく自分でできる。



 後は訪問入浴とか頼めば自宅でずっと生活できるのに、狭かったりとかして車椅子が通れなかったりとか、後は段差があったりとかそういうので結局自宅を離れて施設に入らざるを得ないって言う方結構いるので、そういうのを解消できるのではないかなと思います

物理的な原因で家にいられなくなるような方たちも入れるようなシェアハウスならいいなと思います。


 後はみんな結構最期まで人のために生きていきたいという思いが非常に強いです。だから、シェアハウスだったら多分、みんなが協力して自分のできることをやっていくっていうチームワークみたいなのも多分できるかもしれないので、そういう助け合いの中で生きていくっていうのもいいのかなって思います。


 できることがあるのなら、残存能力を生かした生活をしてほしいです。


 それなら年取って私も入りたいですね

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