• 煌めく返り花

音楽療法士のすみえさん インタビュー全文 

Q1:ご職業は?

音楽療法士です。音楽の持っている様々な機能を使用して病気の方や障害を持っている方の機能向上や維持を目指しています。また、病気の方だけではなく、健康な人へも音楽を使って、気分を盛り上げたり、落ち着いて戴いたりとういうこともしています。また、緩和ケアで音楽療法をやる場合にはライフレビューを促すような音楽を提供しています。音楽療法の学会認定の資格は実践を始めて8年目、音楽療法学会が発足して2年目の2002年に取得しました。その後、大学院医学系研究科で医学を専攻し、医学博士を取得しました。大学は音大ではなく、英米文学科だったのですが、卒業後はピアノの教師になりました。ずっとピアノを教えていたのですが、ある時ふっと桜林仁先生の「心をひらく音楽」という本を読み、音楽療法に自分のやりたいことがフォーカスしたので音楽療法始めました。1994年からお年寄りの施設で実践していましたが、「笑顔が増えました」とか「生活が豊かになりました」という主観的なことだけでは療法とは言えないと思い、医学を勉強するために大学院に進みました。また、毎年東日本大震災の被害を受けたいわき市の施設からお祭りに呼ばれて参加しています。そのお祭りでは、和太鼓のグループの人と一緒に和太鼓演奏し、また、別の時期には震災ボランティアコンサートをやっています。




Q2:認知症や高齢者の方々にどのような音楽療法を提供していますか?

認知症グループホームのみなさんは、そこでずっと生活していて、食事のあとテレビをぼーっと見ている感じで過ごされている方々です。そのため、施設長さんや理事長さんから言われたことは、「機能維持をしてほしい」と。だから運動機能の維持を目的にグループホームではやっています。歌を歌っていただくことで、気分転換にもなりますし、やっぱり生活にハリが出てくると思っています。認知症高齢者デイサービスの方は、男性が2、3人いらっしゃるのですが、音楽療法の時にはデイサービスで過ごしてる時とは違った表情を見せるんです。歌や楽器をやると女性が中心になってしまうのですが、やりようによっては男性も「おお!あんなことしてる」という姿を見せてくれるので、ケアスタッフさんとは違った見方もできるし、その人を引っ張り出すような活動をしています。

私がこれらの施設で行っている音楽療法は、ゆったり音楽を聴くのではなく、運動機能の維持・向上のためなんですね。ですから、昔の曲に合わせて首とか頭とか手を動かしたり、座りながらステップ踏んだりなど準備体操から始まります。あとは高齢者用に開発された鈴とかタンバリンとかカスタネットなどの楽器を使ってなるべく両手を使って頂いています。準備運動の後は音階練習から始めて,昔の歌や季節の歌や歌謡曲に合わせて楽器演奏する。最後にはオー・シャンゼリゼを歌いながら立てる人は立って、ステップ踏める人はステップを踏んで、体を動かしながらシェイカーという楽器を両手に持ってシャカシャカしてもらいます。そして、そのあとは和太鼓ですね。和太鼓を打って頂いて思いっきり発散して、踊れる人は踊ったりして、最後クーリングダウンして終わるというそういうプログラムを1時間行っています。




Q3、音楽療法の効果は?

重度の認知症の方が多いので、何もしないとどんどん落ちてくる方が多いです。じゃあ音楽療法でどこまで良くなるかというと、右肩上がりに良くなるっていうことはないですが、維持はしている。急カーブに降りないっていう維持の仕方だと思います。でも途中で、脳梗塞になって病院に入院して、帰ってくると後遺症でかなり落ちてしまう方がいらっしゃるので、やっぱり疾病には勝てないかなって面はあります。けれど、運動機能は良くならなくても、ご家族と音楽を楽しむなど「その時間を楽しんで頂けているな」という実感があります。そういう意味で、機能が低下してしまってもその人なりにその時間を楽しんでくださっているのかなとは思っています。

あと、昔の歌を歌うとその頃の思い出が蘇ってくるというように、歌をきっかけに突っ込んでいくと、ご家族やスタッフの方でも知らない記憶や思い出を掘り出すことができるので、私たちのような外部の人間が接する事は良い事なのかなとは思います.

プログラムは、「今日これをやろう」と思ってもその時によって「ちょっとこれやる雰囲気ではないな」と思うことは多々あります。落ち着かない人がいる時には、落ち着くようなプログラム,気を惹かせるようなプログラム,みんなでできるようなプログラムなどに変更したりしますね.そういう落ち着かない人を取りこまないと、どっか行っちゃうんですよ。取り込むにはその人の話を聞く、何したいとか色々聞いてあげて、それでその人を仲間に入れて、輪の中に取り込む、そうすると自分は今何してるか分かんなくなっちゃって、そこに入ってきますよね。だからまずは、人を取り込むことを先にしますね。こういうことは、対象者の方をたくさん見ないとできないことだと思います。

最初に音楽療法を始めたのは,20年以上前、群馬県の榛名山のふもとにある老人ホームでした。10年間やっていたのですけが、おかげで私の方が色々なことを学べました。

Q4:この10年間の中で何か積み重ねてそこに至ったのか?

音楽療法ではだいたい主観的な評価しかしていないですね。体がどう動くかを理解してない先生が多かったんですね。私はそれがちょっと疑問でした。重度の認知症の方が、ずっと歩き続けていて、座っていられないような方でも太鼓を目の前に持って行くとなぜか叩けてしまう訳です。こういう認知機能と運動機能の関係性をすごく不思議に思っていました。その辺を榛名山の麓の10年間で経験できたかなとも思います.

Q5: 音楽療法に参加する認知症の方たちの様子は?どれくらいの頻度で行っていますか?

私を覚えている方たちは、私が行くと歌を歌うってことが分かってるので、集まってきてくれます。覚えていない方は、「はじめまして」といらっしゃるんですけど、それでもその方たちは「なにか始まるのかな」ということで、楽しんでくださっていると思います。また、参加している間ずっと集中している方は、半分くらいですね。あとの半分は、食後なのでどうしても眠くなっちゃって。始まった時から寝ちゃっている方もいらっしゃいます。でもそこで無理に起こしてもね。「寝たいんだなあ」と思うし。「起きていて欲しい」と思いますが、そこはスタッフさんに任せています。

頻度は2週間に1度です。本当は、最低1週間に1度行いたいですね。でも、それができないので、20分で良いのでスタッフの方に毎日やってほしいとお願いしたことがありました。2ヶ月ぐらいは続いたのですが、どうしても忙しいようで継続できませんでした。2ケ月やってる間は、とても良かったんです。できたらやっぱり毎日やってほしいなーって気持ちです。毎日していた時は、リズムのノリがいいですし、みなさんスタスタと歩いてきました。

Q6:グループホームに「もっとこれがあったらいいのに」というサービスは何ですか?

そこの施設は体操の先生も来てるんです。だから、体操と音楽はやってるので、芸術まで行かなくてもなんかワンランク上の遊びを提供できるといいなと。お花を生けたり、園芸をしたり、絵を描いたり、書道をしたりとか、そういうのが月に1回ずつくらいあってもいいかなと思います。みなさん、何もできないわけじゃない。こちらから何か提供してあげれば絶対できると思うので、そういう専門家たちが入り込むことで、より良い、質の高い生活ができるんじゃないかなと思います。私が行っているグループホームでは、お元気な方は一緒にご飯を作ったり、お料理のお手伝いをしたりやってますけど、もうちょっと他にも楽しめるようなことがあってもいいのかなと思いますね。




Q7:自分もここだったら入れるなと思う施設ってありますか

ピアノを持って入ることはできない。きっと毎日弾いていたら「うるさい」って言う人もいるでしょう。そう考えるとやっぱり施設で生活するのは無理なのかなーとか思いますね。聴くだけではなくてやっぱり弾きたいですね。多分指も動かなくなると思うんですけど、それでも自分の弾ける範囲内で弾いていたいなと思いますね.

Q8:これは絶対し続けたいことはありますか?

やっぱりピアノかな。今のようにいろいろな施設で何かできるってことは限られてきますよね。それもできなくなったら、やっぱり家でピアノを弾いてるしかないわけですよね。だからやっぱりし続けたいことはピアノを弾くぐらいかな。ピアノ弾きたいという気持ちを持ち続けられるか心配ですけどね。やっぱり認知症になるといろいろやる気もなくなってきちゃうので。グループホームでも昔ピアノを弾いていた方がいらして、亡くなるちょっと前ぐらいまで、紅葉とかふるさととか赤トンボを伴奏してもらったんです。ちゃんと伴奏できるのね。認知機能落ちていた方なんですけど、昔やっていたピアノだけはできたんですよ。素晴らしかったなあと思います。今も脳梗塞になってしまった方がいらっしゃるのですが、その方は歌を歌えるので私がイタリア歌曲の伴奏をするとイタリア語で歌ってくださるんです。

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