10月の下旬に和歌山県で柚子の収穫を手伝ってきました。柚子は柑橘類なので枝には棘があります。収穫の際には棘から身を守るために、鹿皮の手袋に農家の女性がかぶる日除けの帽子を目深に被り作業にあたります。
主に男性が高枝切り鋏でたわわに実った柚子のついた枝を落とします。このとき切り落とすのではなく、枝を掴んだままそっと地面に置くのです。でないと、柚子が自分の棘で傷ついてしまうから。女性は地面に置かれた柚子の枝を払い、ヘタをなるべく短く切ってコンテナに入れます。切り落とした枝は棘を踏んで怪我をしないよう、地面に放置せず全てゴミ用の袋に集めます。これはのちに焼いてしまうのですが、柚子の木は油を多く含むので生木でもすぐによく燃えます。
柚子はベテラン女性の目利きで綺麗なものだけが選ばれ玉のまま出荷となります。それ以外のものは絞って果汁を瓶詰めにします。柚子は収穫後、水に濡れると黒ずんで痛みが早くなるので絞り用の柚子は洗わず1つずつ丁寧にタオルで拭いて汚れを落とし、足踏みの絞り機で絞ります。コンテナには18kgの柚子が入れられ1シーズンで300〜400箱つまり5.4〜7.2tの柚子を収穫するのですがそれぞれの形で出荷するまでの全てを手作業で行います。
柚子の収穫のお手伝いは今年で3回目ですがお手伝いに行くたびに、自分たちの口に入るまでにはたくさんの手間暇がかかっているのだなと実感します。常日頃、家計のことも考えつい安いものを選んで購入しがちですが、労働に対する正当な対価を支払っているだろうか、間接的にでも誰かから搾取するような買い物をしていないだろうかといった不安を感じる時があります。具体的に自分の行動を変えるまでには至らずとも、立ち止まって考える良い機会となっています。
話は変わりますが、柚子の収穫時期にはアルバイトをお願いするのだそうです。地域でアルバイトの日当は決められており男性の方が女性より数千円高いのだそうです。今年ある女性が男性と同じだけの日当が欲しいとおっしゃったそうで、雇い主さんとしては少し困りましたが他の人の手前、決められている金額しか払えないとお伝えしたそうです。しかし仕事ぶりを見ると男性よりよく働き手際もよく、高い日当が欲しいと言っただけはあると感心していました。柚子の収穫は力仕事が多く、男性が重宝され対価が高いのもわかるのですが性別で日当を決めてしまうのは男女平等でない気がします。かといって能力主義で日当を決めるとなると雇い主さんも困るでしょう。男女平等や価値と評価といったことは日常あまり考えませんが、今回はちょっとした宿題をもらってきたような和歌山行きでした。
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