ニュースレター39号(2020年8月末発行)のインタビュー記事全文です. 認知症について気になっている方,親の介護を考えている方,これから歳を取る方,皆さんに読んでいただきたいです.ぜひ感想もお寄せください.
ご両親を看取ったNaomiさんがインタビューを受けてくれました。 認知症が悪化したときの本人と家族の混乱、最期も生き方のこだわりが見える、死に向けて体が準備する、認知症を隠さず向き合うこと、などみなさんの参考になるお話がありました。
Q:お母様を介護している生活の中でどのような経験をなさったか教えてください。
A:母は2009年に軽い認知症(アルツハイマー型)の気があると言われて、徐々に悪くなっていました。2015年に主介護者の父がレビー小体型認知症の発作を起こし、それを機に母の認知症もガクンと悪くなりました。そこからですよ、私が主介護者になったのは。父の入院から、母を施設に入れるまでの2週間が人生最大の危機でした。
最初に母が入ったのは、父の入院していた精神科の隣のすごくいいケアホームでした。でも病院の続きみたいでお家じゃないって思ってたみたいでした。お母さんここで暮らすんだよってなったらええってなっちゃいました。
それで次に芸術的活動に力を入れてるデイケアセンターみたいな所に連れてってもらいました。玄関入ったら短冊に俳句がいっぱい壁に並んでるの。それでああ楽しそうだなと思ったのですが、母は数分間で固まっちゃいました。「まあ、この俳句には季語がないわ」「私が何でここに」とか「講師で呼ばれましたの?」って言うの。
3件目にいった有料老人ホームで初めてですよ、ちゃんとツカツカと歩いて行ってロビーのソファーに腰掛けてお茶を飲んでリラックスしたのは。
Q:何が良かったのですか?
A:ホテルと思ったんですよ。そこのケアマネさんがすごく上品な人で「よくお越しくださいました」みたいなホテルのクロークみたいな人だったの。それで絵画とかちぎり絵とか、ものすごいレベル高いの。
Q:その後はどのような展開に?
A:それから夫婦で有料老人ホームに2年居ました。母は良かったんだけども、父の妄想が激しくなってね、そこにいられなくなっちゃいました。それで近所の認知症専門のグループホームに引っ越しました。そしたらそこが自宅と間取りが全く一緒でした。そうしたら父が元気になりました。
それで母が、お父さんが行くなら私も、とか言って一緒に引っ越したの。でもそうすると芸術アーティストの活動はできなくなるじゃない。でも、もう施設入所から2年も経っていて、その頃はボケボケが進んじゃって字も書けないようになってた。そのような状況だったので、芸術活動ができなくなることはクリアしました。
なんとなく田舎な感じのところの方がむしろ良かったのよ。家族経営の小規模グループホームっていいね。
Q:グループホームにお二人が入った後、どんなことが待ってたんですか
A:グループホームに入ってからは症状が落ち着いて、ひたすら衰えていくだけでした。
母の場合は知的な活動をいつまで続けられるかっていうのがテーマで、言語に対する執着感が気になりました。父はとにかく体にこだわりました。
その人それぞれの、どこをこだわって生きてきたかみたいなことが、最後までよく見えました。楽しいとか悲しいとか感情の発露みたいなものが。
その人らしい、意地の張り方ってあるじゃない。それはすごい見てて面白いですし。意地ってその人を生かしている原動力なんだね。
認知症って、綴じられてる本がパラパラパラと心の綴じ目がなくなっちゃう感じなの。記憶がパラパラパラと。
母の場合はこれがただただサラサラって流れていっちゃって、散らばってても紙でしょって、本だなってわかる感じ。
父の場合はこの間に魔物がいっぱいいて、散らばってるのが例えば蛇とかに変容しちゃって、本じゃない別のものに編集されちゃって、それがすごい怖いって感じ。
Q:最後数年は大変でしたか。
A:まあ不良娘ではあるのですが、最後は親孝行できたと思ってますよ。やっぱり排泄を除いては介護の話はできません。人間って死ぬ時、体を綺麗にして死ぬんですね。
最後の三日間は夜も寝ないでオムツ替えって感じでしたから。
私にとって体が浄化し準備してるんだなっていうのが分かり、呼吸も浅くなり、自然に死んでいく様子をつぶさに見たっていうのがすごいことでした。彼にとってもそうかもしれませんけれど、お家にいるって言うのは分かってたので。
家で死にたいって前から言ってたんですよ。
入院して危篤になる2週間前から意思表示してたんですね。そうすると病院の方も準備してくれてるんですよ。
そういう風にして死んでいった父ではあるが、死んじゃえば介護ってなんだったんだろうってもんです。
家族の絆が強くなるみたいな感じはありました。お互いのことを理解し合うとかそういうのは、危機的状況にならないとなかなかわかんないじゃない。お互いのことがよく理解できたなっていう。まあ母のアルツハイマーは長かったですけど。いい死に方だったなと思います。そんなに悔いはないなって感じです。
Q:読者には、健康な両親がいる方もいます。その方たちのお父さんやお母さんが認知症になった時、なんて声をかけてあげますか。
A:まず隠そうとしないで恐れずに向き合うことだね。
はっきりカミングアウトした方が周りも助けてくれるし、隠し恥ずかしいことだと思うと症状が進行しちゃって打つ手がないじゃない。
だから治らないけど、進行はゆっくりすることができるんですね、私の母の例みたいに。だから遅らせることはできるから、あきらめないで。認知症になっても日頃の活動で好きなことだけでもいいから続けることが大切だと思います。
でもレビーでお父さんはどうしたらいいか全然わからなかったな。
もし認知症だって告知されると、ガーンとなりますけどガーンとなる時期をできるだけ早く通り過ぎてカミングアウトするといいよ。周りの人が助けてくれるよ。そこを信じていた方がいいと思います。(Tommy & Fukky)
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