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執筆者の写真煌めく返り花

「世紀の一戦の名実況」

オリンピックも閉会式を迎えようとしている。いろいろなドラマがあった。実況中継を担当アナウンサーにとっても、一試合・一試合実思い入れがあったようだ。


北京オリンピックにおいての名実況は、私はスピードスケート女子パシュート決勝戦をあげたいと思います。


日本チームはカナダをリードしながら最終コーナーを迎えた。あと少し!と思ったその瞬間、3人並んだ一番後ろの高木那菜選手が転倒してしまった。


1秒より短い時間を競う戦いにおいて、「転倒」は負けしかない。その時の実況アナウンサーは一瞬息をのみ「日本の隊列が崩れた。」「カナダ金メダル」と伝えた。


「転倒」という言葉を使わなかった。その言葉の選択には実況アナウンサーの思い入れが込められているように私は思った。試合前から金メダルへの期待が集まっていた一戦で、先頭を走る高木美帆選手にはゴールが見えていたと思う。銀メダルを獲得した一戦、また金メダルを逃した一戦として何度も放送されることが予想される。誰よりも悔しく残念な思いは選手本人であろう。テレビで放映されるたびに「転倒した」という言葉が繰り返されたとしたら、非常に切ないことであったと思う。



今回の日本チームの3人の選手が滑る姿は「世界一美しい隊列」と言われていた。その隊列が崩れたということは、思った通りの試合ができなかったことを意味する。試合にはいろいろなアクシデントはつきものである。


実況するアナウンサーも転倒した場合も事前に想定していたのかもしれないが「転倒」という言葉を使わなかったその実況は、選手に対するリスペクトと愛情にあふれるものだった。



コロナ禍で世界から観客が集まることができない二度目のオリンピック。日常でも思ったようにいかないことばかりの毎日。だからこそ、この上手くいかなかった試合に流れた言葉が、心に響いたのかもしれない。名実況に、私的には金メダル。


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